私は、以前、強迫神経症で悩んでいました(それは、私がひきこもり状態にあるときのことです)。
強迫神経症というのは、
普通の人からすると、
そんなに大事であるとは思われないようなことが
異常に気になってしまって、
もちろん、
自分でも ある程度は 無意味であると分かっていながらも、
その 気になって仕方ない気持ちを消すために、
何らかの行動を起こす、
という神経症です。
しかも、
その何らかの行動は、
気になって仕方ない気持ちが解消されるまで、
本当に、何度も 何度も
自分でも あきれるぐらい
繰り返されることが多いのです。
例えば、私の場合、
寝る前に、
冷蔵庫のドアがきちんとしまっているのかどうか、
というようなことが気になっていました。
そのように 一旦 気になり始めたら、
そのことを確認しないと、
とても寝ることなど できませんので、
当然、確認しに行きます。
すると、
今度は、水道の蛇口がきちんとしまっているか、
というようなことが気になってきます。
当然、確認しに行きます。
それが終わると、
今度は、ガス、炬燵のスイッチなど、
気になることは、いくつにもなります。
そうして、ようやく それらの確認が全部終わったときには、
今度は、最初に確認を終えた、冷蔵庫のドアのことが
また気になったりするのです。
こうして、大変無駄な 一連の確認作業が
10回以上も繰り返されるようなことは、
決してまれなケースではありませんでした。
当然、当時の私でも、
このような確認作業がまったく無駄である、ということは
よく分かっていました。
よって、
この 変な作業を 一刻も早く やめるために、
いろいろと 自分なりの工夫はしてみました。
例えば、
今日の確認作業は3回まで、というふうに
自分で ある程度の制限を加えてみたりしました。
しかし、その場合でも、
その 3回目の確認作業が終わっても、
どうしても 気持ち悪さが解消されず、
途中で やはり
今日は6回までにしよう、などと、
自分でつくったルールを変更してしまい、
結局は、10回以上まで 回数が増えるケースが ほとんどでした。
当時の私は、自力で
自分の強迫神経症を克服することができませんでした。
結局、
私が、強迫神経症を ある程度 克服できたのは、
社会に出てからのことです。
社会に出て しばらくすると、
私にも、私の家まで遊びに来てくれるような知人が
2~3人 できました。
そんな知人の1人が 私の家に来てくれて、
何かの用がすんで、二人で一緒に
家を出ようとしたときのことです。
私は、ドアのカギを閉めて、
その知人と一緒に歩きだそうとしましたが、
やはり、いつものように、
本当に カギが確実に閉まっているかどうかが
気になり始めました。
その 気になりかたは、
やはり いつものように、
大変 強烈なものだったので、
私は、ドアのところに戻って、
もう一度 確認したいという気持ちを
抑えきれません。
しかし、今回は、
私にとって、大切な知人が そばにいますので、
いつものような感じで ドアのところに戻って、
確認をするようなことは
とても できません。
なぜなら、そんなことをすれば、その知人に、
「なんだ、こいつ」
と、敬遠されるようになってしまうかもしれないからです。
そこで、私は、いろいろ考えたあげく、
「たぶん、カギをかけたと思うが、万が一ということもあるので、
一応、もう一度 念のために 確認しておくわ」
と、できるだけ自然に言って、
ドアのところに戻って、もう一度 確認をしました。
幸い、その知人は、
私の この行動に対して
特に 不審感を抱いていないようです。
カギは 当然、かかっていました。
私は、2~3度、
カギが かかっていることを
しっかりと 確かめました。
知人も、
私が 2~3度も しっかりと確かめている様子を
はっきりと見ているように 私には思われました。
それから 私は、
知人と一緒に 再び 歩きだそうとしましたが、
また すぐに カギを確認したいという気持ちが わき起こってきました。
しかし、ここで もう一度、確認をしに行ったとすれば、
知人は 明らかに おかしいと感じるにちがいありません。
そこで私は、かなり つらかったのですが、
カギを確認したいという気持ちを
必死に抑え込むように努力しました。
結果、
知人から変なやつだと思われたくないという気持ちが、
カギを確認しに行きたいという気持ちを
いくらか 上回ってくれたようで、
なんとか カギの確認をあきらめることができました。
このとき以来、
私の強迫神経症は、徐々に ましになっていったように思います。
以上で 何が言いたかったのかといえば、
強迫神経症を克服するのは、自力では かなり難しいのではないか、
ということです。
私は、自らの体験から、
強迫神経症を克服するためには、
ある程度 人の目にさらされる必要があるのではないか、と考えます。
ですから、現在、ひきこもり中の人は、
人の目にさらされる機会が非常に少ないですから、
現状では、強迫神経症を克服するのは非常に困難であると、私は考えるのです(もちろん、ひきこもり状態にある人も 家族の目にはさらされています。しかし、家族であれば、あなたが強迫神経症であることを仮に知ったとしても、そのことで 家族があなたから距離を置くということはないと思います。よって、ここでは 家族の目は度外視することにします)。
しかし、心配することはありません。
なぜなら、
現在、強迫神経症でかなり苦しんでいたとしても、
将来、社会に出て、何人か知人ができれば、
その時は、きっと、少しずつ よくなっていくと
私は思うからです。
現在、ひきこもり状態の人は、
現時点では、強迫神経症のことで、
あまり悩みすぎないほうがよいのではないかと、私は思います。